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クオリティ国家、ポイントは国際化


大前研一さんの著書『クオリティ国家という戦略』を読みました。

「クオリティ国家」というのは大前さんの造語で、付加価値力と生産性の高い人材を備えた規模が小さく優れた国家のこと。スイス、シンガポールなどがその典型で、人口が縮小していく日本は、今後はこうした国家を見習うべきというのが大前さんの持論です。

これを読むといろいろと参考になるのですが、こうした国々はとにかく世界の繁栄を自分の国の利益として取り込むのがとてもうまい。例えば、国家間の郵便料金の取り決めを上手く利用して世界中のDMを誘致しているシンガポール。たまに日本国内の企業からのダイレクトメールが、シンガポールの消印で発送されてくることはありませんか?私はたまに見かけて、どうしてかなと思っていたら謎が解けました。実は、国際郵便というのは発送した国が全額郵便料金を受け取り、受け手側の国に入る郵便料はゼロ、という決まりになっているそうです。なので、シンガポールは受け手側の国内郵便料よりも安い郵便料を戦略的に設定して、世界のグローバル企業からDM発送を請け負っているのです。ずるいといえばそうかもしれませんが、スマートといえばスマートですよね。私はこれを聞いて、カッコウの托卵(他の鳥の巣に卵を産んで育てさせる)を思い出しました(笑)

ここでもキーワードは国際化。こんなことができるのも、自国だけでなく全世界を俯瞰する広い視野を持つことが大きな強みとなっています。大前提として言葉の壁がないことが不可欠でしょう。クオリティ国家のモデルとして最も詳しく紹介されているスイスでは、ドイツ語、フランス語、イタリア語、ロマンシュ語の4言語が公用語となっており、多くの人が加えて英語もマスターしています。そのため、ドイツやフランスなどから、国境を越えて優秀な人材がスイス企業に勤務しやすい環境も整っているそうです。日本ではグローバル教育=英語教育と思われがちですが、スイスでは一歩も二歩も進んでいて、その時のメンバーを見て一番コミュニケーションがスムーズに行える言語を選んで話すのが常識だとか。バイリンガルですら珍しい日本にいると、4言語とか5言語とか、どうやったら習得できるのか不思議でなりませんよね。同じ人間なのに、スイス人と日本人、どうしてこれほど違うのでしょうか?

答えはすべて必要性だと思います。

人間は必要に迫られたら多少難しくてもできるようになります。その能力は、人種を問わず生まれながらに備わっています。

スイスという国は地理的に大国に囲まれ、長い間いつ侵略されてもおかしくない位置にいました。そのため、永世中立国という戦争をしない国でありながら、全国民に兵役があり、各家庭でもキャンプなどを通して万一の事態に常に備え、体を鍛えています。隣国からの情報がいつでも耳に届くよう言語の壁も低くしておく必要があると思います。保険や年金についても、個人で備えておくべしと教育され、企業にしても、補助金などで国が企業を救済することはありませんから、自立して稼ぐ術を身につけます。国内のマーケットが小さいので、必然的にグローバル企業にならざるを得ません。

翻って日本はどうでしょうか?

戦争反対、不戦国、それ自体はいいと思いますが、非常時に自分たちで国を守るという意識は一般市民にはまったくありません。徴兵制について議論されることもありますが、反対の立場を取る国民が大半です。では、誰が国を守るのでしょう。北朝鮮からいつ攻撃を受けてもおかしくない位置関係にありながら、危機感がなさすぎる気がします。

年金についても、国や自治体の責任を問うばかりで、個人としてしっかり準備している国民がどれだけいるでしょうか。消費税増税は先送りされるばかりで解決策はあがらず、ズルズルと子どもたち、孫たちへの負担を増やし続けています。企業の多くも補助金頼み、つぶれそうになると国が税金を使って救済するのも、私はどうかと思います。

著者は今の政治のあり方を批判し、道州制にしてフレキシブルな政治を提唱しています。それについては、私は勉強不足でコメントする立場にありませんが、スイスなどクオリティ国家の現状を知るにつれ、日本人や日本企業が自立できていないなぁとつくづく感じました。でも今までのぬるま湯では乗り切れない時代はすぐそこまで来ています。その必要性を肝に銘じて、せめて自分や自分の家族は、個人として自立できるようにしたいと考えています。

皆さんはどのようにお考えでしょうか?

本日も、お読み頂きありがとうございました。

『クオリティ国家という戦略-これが日本の生きる道』大前研一

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