文字を意識させてはいけない理由
新型コロナウイルス(COVID-19)感染者が東京でも減ってきましたね。
緊急事態宣言もあと少しで解除になるでしょうか?
本日はよく保護者様から受ける質問にお答えしたいと思います。
どうして文字を意識させてはいけないのですか?
英語絵本の読み聞かせについて、保護者様には「文字ひとつひとつを意識させないように注意してください」とお願いしています。
その理由は二つあります。
1. 子どもが興ざめするから
2. 単語をかたまりで覚える能力が低下するから
お子様を英語教室に通わせると最初にABCソング等を覚えてくるのではないでしょうか?
♪A, B, C, D EFG, H, I, J, K, LMNOP ...♬
子どもたちが大好きなABCソング。子どもが好きなキャラクターも出ないし、ストーリー性もないこの歌を最初に習うのは、実は大人の事情から。
これを歌うと、非常に保護者受けが良いんですよね。
保護者の多くは、英語を文字から習い始めています。なので、お子様がアルファベットを知っているととても鼻が高いようです。そうすると、英語絵本の読み聞かせなどの時にも、アルファベットをひとつひとつ指差ししては、「これはAでしょ、Bでしょ」と日本語で声掛けしてしまう。お話そっちのけで…
でも、これをやってしまうと子どもとしては興ざめ。
みんなと一緒にABCソングを歌っている時は楽しいんです。⇒アルファベット大好き♡
絵本を読んで欲しいだけなのに、「Aでしょ、Bでしょ」と始めると⇒英語の絵本読みたくない、つまんない⇒アルファベットも嫌い(+_+)
英語の歌を覚えることも、アルファベットを覚えることも、英語学習にはとても良いこと。でも、やり方を間違えると、英語嫌いを育ててしまうことになりかねません。A,B,Cと文字を指で押さえてひとつひとつ意識させるよりも、
絵本を読んであげる ⇒ 本って楽しい ⇒ 本を読みたい
というプロセスに進んでいくのを待ってあげてください。やがて自然に文字は覚えます。
「待つ」は、成功する育児のキーワードでもあります。
特に子ども英語はエンターテイメント。どれだけ盛り上げて子どもを楽しませるかで、学習効果も継続できるかも決まってきます。興ざめするようなことは避けましょうね。
絵本の読み聞かせについて、詳しくは⇒こちら
そして、脳科学の観点からは、次の理由が決定的なのですが…
お子様が小さいうちは、文字列を目にした時にアルファベットの組合せというように理解しません。単語を固まりとしてイラストのようにイメージで記憶します。
イラスト入りのフラッシュカードが効果的なのは、そのためですね。
この能力が有効なのは、生まれてから臨界期(8歳〜12歳くらいまで。諸説あり)になるまでのごくわずかな間だけ。この能力を使わないともったいない。最初に文字を意識させてしまうのは、みすみすこの能力を損なわせてしまうということ。そんなのもったいないと思いませんか?
日本語もおぼつかない赤ちゃんや幼児ですから、日本語でも英語でも、意味が分からなくても全く問題なく無意識にイメージを脳に詰め込んでいくことができます。大人になってその単語が必要になった時には、気づけばスペルまで覚えていた。「え、何で覚えているの?暗記した記憶がないのに・・・」という魔法のようなお話になるわけです。これホント。
「魔法」と書きましたが、母語ではこのようなことは既にご自身も経験されていると思います。
例えば、小学校で初めて習った漢字。勉強した覚えはないのに、一、二、水、人など、簡単な漢字は難なくすぐに読めるし書けてしまった。そんな経験はありませんか?
犯人、事件、など、意識して覚えた記憶がないのに、新聞やニュースで読んだり聴いたりした時に、いつの間にか意味も分かっているし、漢字も何となく書けるようになっていた。
これは、日常なんとなく見たり聞いたりインプットされていた言葉が、あるきっかけで意識して確実な記憶になった瞬間です。このなんとなく、頭の中にしまっている状態の語彙を私はファジー語と呼んでいます。イメージするとこのような感じです。
幼いお子様の頭の中では、言葉とイメージが輪郭がなくぼんやり左の図のようになって脳に格納されています。これは母語でも外国語でも関係なく、お子様の脳内には無限の格納場所が確保されています。
学生時代、英語の勉強で一番苦労したのは、英単語の暗記ではありませんか?
この時期にファジー語を蓄積しておくと、学生時代にとてもラクになります。
しかしこれが、文字一文字を意識するクセがついたとたん、右図のように記憶するようになってしまいます。ファジーな形では高速で無限に吸収していた言葉(左図)が、ひとつひとつ確実に覚えるようになる(左図)と、覚えるスピードも遅くなり、多くの言葉を覚えるのに苦労するようになります。つまり、あなたが学生時代に苦労した、あの経験をさせることになるのです。
これでは幼児期に英語を始めた意味がなくなってしまいますよね。
ファジー語については、また別の機会にお話したいと思います。
今回ずいぶん長くなってしまいました。
最後までお読みいただきありがとうございました。